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【朝礼ネタ】「一貫性の原理(フット・イン・ザ・ドア・テクニック)」と「返報性の原理(ドア・イン・ザ・フェイス・テクニック)」とは?
今回の朝礼ネタは「一貫性の原理」と「返報性の原理」。一貫性の原理のことを、フット・イン・ザ・ドア・テクニック
返報性の原理のことを、ドア・イン・ザ・フェイス・テクニック
とも呼び、いずれもマーケティングの場面でよく登場する人間の心理。
言ってみれば、自分が客の立場の際「うまいこと丸め込められている」
心理テクニックでもあるわけです。ごく簡単に言えば以下の通り。
A.一貫性の原理
人は自分自身の行動、発言、態度、信念、価値観などに対し、一貫したものとしたいという心理
B.返報性の原理
人は他人から何らかの施しや好意を受けた場合に、お返しをしなければならないという感情を抱く心理いくつか具体例を挙げてみてみます。
「一貫性の原理」「返報性の原理」の具体例【問題】
日常のありふれたやりとりをいくつか列挙します。
それぞれ、A.一貫性の原理 B.返報性の原理 どちらの心理効果によるものでしょうか?
1.新聞の勧誘「こんにちはー、〇〇新聞でーす!」「うち、△△新聞取ってるんで間に合ってます。」
「今、△△新聞さんをお読みの読者様だけに特別なご案内を差し上げておりまして、
お話だけでも聞いて頂けませんか?」「△△新聞の読者だけの? じゃ、ちょっと話だけでも。」(人は「特別なご案内」に弱い)
2.うちの家内「いってらっしゃい。あ、ゴミ出しお願い!」「あ、いいよ」
「あ、悪いんだけど、この手紙も途中のポストに入れてくれない?」「あ、あぁ、いいよ…」(断りようがない)
3.子供のおねだり「お父さーん、新しいゲームソフト買ってぇー!」「この前、買ってやったばっかりだろぅ」
「う~ん。じゃ、そのゲームで一緒に遊んで!」「お、それならいいよ!お父さん、負けないぞーっ!」(すこぶる上機嫌)
4.営業マン(その1)「お客様のお眼鏡に適う製品となりますと、こちら(100万円)をお勧めさせて頂きます。」「お、いいねー。でも、ちょっと予算的にしんどいな。」
「そうですか。では、1つ前のモデルですが機能的には十分にご満足頂けると思います、
こちら(50万円)ではいかがでしょうか?」「100万は厳しいけど、50万なら何とかなりそうだから、これにするか!」(50万=安い?)
5.営業マン(その2)「最近、電気代の値上げでどこのお客さんもご苦労なさってるようですね。」「そうなんだよ。うちもご多分に漏れず大変だよ。」
「そういったお客様の声にお応えして、今お使い頂いている製品の省電力モデルを開発中なんです。
よろしければカタログだけでもご覧になりませんか?」「お、取り敢えず見せてよ、どれどれ?」(もう後に引けない…)
・・・
1~5の例。それぞれ「A.一貫性の原理」「B.返報性の原理」のどちらが働いたやりとりだか、
お分かりになりましたでしょうか?
「一貫性の原理」「返報性の原理」の具体例【解答】
何となく混乱されませんでしたか?
どちらにも当てはまるような、どちらにも当てはまらないような…
解答の前に、1つ。
以下の意味を押さえておくと、混乱が多少解消されるかもしれません。
A.一貫性の法則 ⇒ フット・イン・ザ・ドア・テクニック ⇒
段階的依頼法B.返報性の法則 ⇒ ドア・イン・ザ・フェイス・テクニック ⇒
譲歩的依頼法【解答】1.
A 2.
A 3.
B 4.
B 5.
A・・・
では、以上を踏まえ1つずつ見ていきます。
1.新聞の勧誘【解説】フット・イン・ザ・ドア・テクニック(一貫性の原理)の典型例ですね。
文字通り「玄関に足を突っ込んだもん勝ち」「玄関を開けたら負け」といったやりとり。
△△新聞の読者など、実はどうでもいい話。おそらく□□新聞だろうが、■■新聞だろうが、
新聞未購読者だろうが、営業トークの数文字が変わるだけだと思われます。
2.うちの家内【解説】うちの家内に限ったことではないと思いますが、これも一貫性の法則。
前述した「段階的依頼法」という言葉で捉えると、分かりやすいと思います。
我が家の場合、帰宅時も、家内の巧みな話術に操られ、気付いたら買い物袋をぶら下げた状態で
家に到着することがよくあります。
3.子供のおねだり【解説】返報性の原理ですね。譲歩的依頼法と置き換えた方が分かりやすいかもしれません。
しかしこの子ども、なかなか(ズル)賢いです。
父親がどの程度の要求なら受け入れてくれそうかを、密かに計算してセリフを選んでいます。
当然最初の要求は断られるであろうことが前提。次の要求が、子供の「勝負どころ」なわけです。
敢えてここは、手頃な価格のおもちゃを要求したい気持ちを抑え、遊び相手を選択。
ひとまず素直さをアピールしておいて、後日改めて、「次」に挑むんでしょうね。
4.営業マン(その1)【解説】子どものおねだりの大人バージョン、返報性の原理です。
この営業マン、最初から100万円の商品が売れるとは思っていません。
お客さんの予算をおおよそ予測しながら、50万円の商品が売れれば御の字と考えています。
100万円の高額商品を売ることを諦め、50万円の低額商品に切り替えた営業マンの「譲歩」に対し、
客側としても譲歩しなければという心理が自然と働く。これが返報性の原理でしたね。
5.営業マン(その2)【解説】同じ営業マンでも、こちらは一貫性の原理。
最初に「電気代が高くて大変」ということを自ら認めてしまった以上、省電力化商品に関心がないとは
なかなか答えられない客の心理を巧みに利用した展開。
営業マンの「第一声」。営業マン自身はもちろん、客としても傾注したいですねー。
「試食」は「一貫性の原理」「返報性の原理」どっち?
デパ地下の試食品。若い女の子にニコニコと勧められれば、断る理由などない。
などと言うと家内ににらまれるわけですが、さて「試食」というプロモーション。
一般的に、客は店員から直接食品の提供を受けることにより、口に合う合わないに関係なく、
何となくその商品を買わなければいけないという気持ちがわくそうです。何となく分かりますね。
これは、返報性の原理。
しかし実際は、自ら進んで試食品を口にするケースはさほど多くないわけです。
要するに、店員に積極的に促されて口にするケースの方が圧倒的に多いわけですね。
この場合、一度「試食の勧め」を受け入れてしまった客としては、自分の行動に一貫性を
保ちたいという「一貫性の原理」が働き、結果として「購入の勧め」も受け入れてしまうことが
多いと言われています。
言うまでもなく、この場合に働いている心理は、一貫性の原理。
つまり「試食」の場合は、その行為を自ら進んで行ったか、勧められて行ったかの初動の違いに
よって、働く心理作用が異なるようです。
だから何? と言われても、それは困ります。
一貫性の原理をクロスセルとも
マーケティングにおいて、「クロスセル」という言葉は、「アップセル」とコンビを組んで登場する
機会が多いですね。
簡単に言えば、既存顧客に対しこれまでの購入商品に関連した「別の商品」を売るのがクロスセル。
それに対し「上位商品」を売るのがアップセル。
クロスセルなんて言葉は普段使わずとも、気付くと部屋に要らない物が増えてたりするものです。
何となく「一貫性の原理」「返報性の原理」が、身近に感じられてきませんか?
日常を見渡せば、知らず知らずのうちに、様々な心理作用が働いていることに気付きます。
で、大体は「利用される側」です。
「ローボール・テクニック」利用する側。利用される側。
最後、「一貫性の原理」の利用例の1つに、「ローボール・テクニック」と呼ばれる手法があります。
客にとって不利な条件を意図的に隠しておいて購入決定後に条件を出したり、また、
購入意思決定後に少しの上乗せで購入できる上位商品を勧めたりする手法で、
一度購入すると決めた後ではその決定を覆してまでキャンセルしようとはなかなか考えない
という心理を利用(どちらかと言えば悪用)した手法。
「ローボール・テクニック」という名前。
キャッチボールで、最初は取りやすい高さの低いボールを投げ、少しずつ高いボールを投げていく。
すると、普通はキャッチできないような高いボールでもキャッチできるようになるという話に由来
しています。
・・・
日常、
もしかして、騙されているのでは?と、ふと感じた時。
一貫性の原理に則って、ただただ一貫性を保とうとするあまり、常軌を逸していないか。
また、後で知った不利な条件や要求を最初から聞いていても、当初の要求を受け入れたか。など、初心に返り自問自答したり、また、相談できる第三者がいれば、今の状況を冷静に判断して
もらうことで、自分が騙されていることに気付くことが多いようです。
「一貫性の原理」と「返報性の原理」は、心理的な作用だけに逆らえない部分も多いですが、
「フット・イン・ザ・ドア・テクニック(段階的依頼法)」と、
「ドア・イン・ザ・フェイス・テクニック(譲歩的依頼法)」は、意図的なテクニックの部分。
朝礼ネタとして、また普段の会話ネタとして、会社では出入りの営業マン、プライベートでは
行きつけのショップの店員など、今までと違った角度で観察してみると、
今まで見えなかった「何か」が見えてくるかもしれません。
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