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【朝礼ネタ】年末調整の疑問 ~103万円・130万円の壁 交通費・通勤手当は?
今回の朝礼ネタは「年末調整」「103万円・130万円の壁」。例年のこととは言え、自宅に生命保険料控除証明書やらが届き、時期を同じくして、職場で年末調整の用紙等が配布されると…
もうそんな時期か、1年早いなーと、感じる年末。
余談ですが、年を重ねる毎に1年が短く感じる現象のことを、ジャネーの法則と言います。
ジャネーの法則とは?~年をとるほど1年が短く感じるのはなぜ?~さて、「103万円の壁」と「130万円の壁」。
年末調整と密接に関係している「壁」は次のうちどれでしょうか?
1.両方 2.103万円の壁 3.130万円の壁
「扶養範囲内で働く」の2通りの意味
1の「両方」と答えられた方が案外多いのでは?と勝手に想像しつつ、“年末調整と密接に”という観点からすれば、答えは、2の「103万円の壁」です。
103万円の壁は、税金(所得税)面での扶養範囲を指し、原則として、毎年1月~12月の
『収入確定額』によって判断されるもの。
その収入は、支給日ベース?発生日ベース?という疑問については、原則支給日ベースです。
国税庁『所得税基本通達 第36条9項(給与所得の収入金額の収入すべき時期)』より
36-9 給与所得の収入金額の収入すべき時期は、それぞれ次に掲げる日によるものとする。
(1) 契約又は慣習その他株主総会の決議等により支給日が定められている給与等についてはその支給日、その日が定められていないものについてはその支給を受けた日(以下、省略)
一方、
130万円の壁は、社会保険(年金、健康保険)面での扶養範囲を指し、原則として、今後の収入が恒常的に年収130万円(月収108,334円)以上となるかどうかの
『収入見込額』によって判断されるもの。
日本年金機構『被扶養者の認定(収入要件)』より
年間収入とは、過去における収入のことではなく、被扶養者に該当する時点及び認定された日以降の年間の見込み収入額のことをいいます。(給与所得等の収入がある場合、月額108,333円以下。雇用保険等の受給者の場合、日額3,611円以下であること。)
また、被扶養者の収入には、雇用保険の失業等給付、公的年金、健康保険の傷病手当金や出産手当金も含まれますので、ご注意願います。
正しく理解されていましたでしょうか?
103万円は厳格、130万円は曖昧な印象です。
ここまでの記述は、それぞれ本家本元「国税庁」と「日本年金機構」から引用していますので、特に問題はないのですが…
扶養に関する「103万円の壁」「130万円の壁」については、ネット上でも様々な疑問や質問が飛び交っており、本来「1つであるはずの答え」が、実にバラエティに富んでいます。
そこで1つ、
「103万円の壁」「130万円の壁」について見解が割れている代表的な疑問を紹介したいと思います。
103万円・130万円に交通費・通勤手当は含まれる?含まれない? という疑問です。
扶養に関する「103万円」「130万円」に交通費は含まれる?含まれない?
まず、103万円。こちらは交通費(非課税分のみ)は含みません。いわゆる課税所得が対象です。
電車・バス通勤者の非課税限度額は月10万円ですので、超える方はかなりの少数だと思いますが、マイカー通勤者は、その通勤距離によって非課税限度額が意外に低めに設定されていますので、きわどい方は要注意です。当然、超えた部分は課税対象となり、103万円の計算に含まれます。
( 国税庁
『マイカー・自転車通勤者の通勤手当』 『電車・バス通勤者の通勤手当』 )
次に、130万円。こちらは交通費(課税・非課税とも)を含みます。ざっくり言えば総支給額です。
・・・
意外でした?
130万円に交通費は含む?含まない?の見解は、前述の通り、ネット上でもかなり割れています。
ですので、念のため年金事務所に電話で問い合わせた結果… 「含む」でした。
1つ根拠を上げるとすれば、
こちらのページ(日本年金機構)Q.標準報酬月額の対象となる報酬に、通勤手当は含まれるのですか。
A.はい、通勤手当は報酬に含まれます。
厚生年金保険法でいう報酬とは、被保険者が事業主から労務の対償として受けるすべてのものをいい、賃金、給料、手当などその名称にかかわらず対象になります。(以下、略)
人事・総務系の仕事に従事されている方なら、「月額報酬算定基礎届」などと聞けば、“あっ、あの面倒臭い手続きね”と、ピンとくると思いますが、「月額報酬算定基礎届」とは簡単に言えば、毎年4月~6月の3ヶ月分の支払報酬の『平均月額』に基づき、その年の9月~翌年の8月までの社会保険料を決定する手続きのこと。そして、この『平均月額』にあたるのが「標準報酬月額」といったところです。
何よりここでのポイントは
「厚生年金保険法でいう報酬は、すべての手当が対象となる」との表記。
改めて、103万円は所得税に関する扶養の壁で、税務署(国税庁)の管轄ですが、130万円は、社会保険に関する扶養の壁で、年金事務所(日本年金機構)の管轄でしたね。
そして、厚生年金保険法は後者、年金事務所(日本年金機構)の管轄。よって、「130万円の計算には交通費も含む」と推察されます。
「厳格な103万円」と「曖昧な130万円」
社会保険料の決定や130万円の判定において交通費が含まれるということは…
・同じ給与で同じ業務に従事していても、遠距離通勤者の方が社会保険料が高くなることがある
・同じ給与で同じ業務に従事するに当り、通勤距離により扶養範囲で働ける人と働けない人が出てくるということ。
年金事務所の人に「これって、不公平ですね」と楯突いてみましたが、軽くかわされました。
さらに、103万円のことを例に出してみましたが、「そちらは管轄外ですので」と、やはり軽くあしらわれました。
というわけで、
130万円の壁については、前述の通り「見込額」で申請する時点で曖昧さは回避できません。
また、社会保険については、130万円という金額面だけでなく、勤務日数・時間が常用正社員の4分の3以上となった時点で原則として加入義務が生じるという要件も併せ持っており、最終的にはそれらを総合的に判断しなければなりません。
こうした性質上、交通費の扱いについてネット上で見解が割れるのも、何となく分かる気がしました。あわせて、想像はしていましたが、縦割り行政を身近に感じることができました。
・・・
最後に、年末調整と言えば、セットで出てくる確定申告。
ありがちなのが、医療費控除が年末調整で対応できると勘違いして、申告期限(3月15日)ぎりぎりになって慌てるケース。お時間がありましたら、合わせて確認してみてください。
【朝礼ネタ】「医療費控除」と「高額療養費」の違い 確定申告に関係するのは?
なお、
本業以外の副業収入が年間で20万円以上あった方など、収入面(所得税)の確定申告が必要な場合は、結構な手間や面倒が伴います。
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正直、初めての確定申告は「何が分からないのか」が分からない状態^^
年に1回のことということもあり、覚えたつもりのことも、すっかり忘れてしまっていたり、この1年で税制が改正されていたりと、筆者も毎年助けられています。
・・・
さて、年末調整の時節柄、今度の朝礼あたりで
「103万円と130万円の壁にそれぞれ交通費を含むと思う人?含まないと思う人?」
などと質問形式で尋ねてみても面白いかもしれませんね。
・・・
当記事は「一般的」「原則的」な内容に基づき記述しています。
それぞれ例外規定や個別の諸条件等も多岐に渡りますので、ご自身に降りかかる重要な疑問や不明点については、必ず最寄りの税務署または年金事務所までご確認頂きますようお願いします。
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