今年中途入社した新人の鈴木君。彼の悪気のない無自覚な面白おかしい言動に、新人教育担当の先輩社員は日々苦笑いの連続。でも、どこか憎めない存在。
最終的に先輩社員は、そんな面白おかしい鈴木君を通じ、バカと天才が紙一重であることに気付きはじめます。
息抜き目的の笑い話ですが、もし実際に鈴木君が自分の部下だったら…?
と想像すると、ちょっと笑っていられなくなるかもです。
今日は鈴木君の面接日。私が面接を担当することになった。
大学卒業後、「5年間ホームステイ」とありますが…
どちらへ?
自宅です。
はい?
それでは、念のためお聞きしますが、
その後の「警備3年」というのも、
ひょっとして、勤務地はご自宅でしょうか?
・・・。
(黙秘)
それでは、自己PRをお願いします。
大学はFランクですが、FランのFはフェニックスのFです!
学生時代は落ちこぼれでしたが、こうして社会人になった今、
不死鳥の如く返り咲いてみせます!
素晴らしいですね。
でも、フェニックスの頭文字は、FでなくPですね。
・・・。
(黙秘2回目)
別に使用を許可したわけでもない黙秘権を、独特のタイミングで巧みに行使していた印象が強烈だった鈴木君。
当然、人事部長(私の上司)は彼の採用を見送るものと、私は考えていた。
人事部長がなぜ彼を採用することにしたかは謎だが、続いて、入社式での一コマを振り返ってみる。
同時期入社5名を代表し、答辞を述べることになった鈴木君。社長の訓示が終わり…
おそらく、「同期入社社員が一丸となって、一糸乱れず」と言いたかったんだろう…
同期社員が一丸となって、
一糸まとわず…
以来、彼ら中途社員組は鈴木君のせいで、「裸族」と呼ばれている。
・・・
入社式後、中途社員同士で歓談していた時のこと。
どうやら、中途入社の1人が鈴木君と古くからの友人らしく、その友人に向かって、鈴木君が何やら宣言をしている様子が聞こえてきた。
社会人になったからには、
オレはもう、ギャンブルなんか絶対やらねー!
何なら、賭けてもいいぜ!!
面接の時から、彼の発言は一貫して、堂々としている。内容は別として。
ある程度覚悟してはいたが、鈴木君の意識低い系ぶりは、かなり完成度が高く、場合によっては感心に値するレベルだ。
出社早々、散髪に行ったと思われる部長に、こう言い放った。
部長!
頭いかれたんですか?
と周囲を一瞬にして凍りつかせ…
大事なお得意先様の電話取次では…
失礼ですが、
何様ですか?
・・・
先日、外出先の社長から電話が掛かってきた時は…
少々お待ちください。
佐藤部長!
俺様からお電話です!
という始末。
これには、わりとクールな人事部長がコーヒー吹いてた。
新入社員の意見も取り入れるという試みの中、鈴木君も参加した会議の席。
「老朽化等で交換してほしい会社の設備は?」と聞かれた鈴木君の回答。
女子社員。
と力強く答え、
隣に座っていた課長に、グーで殴られていた。
鈴木君を昼食に連れて行った時のこと。
私が券売機に1万円札を入れて、「どれでも好きなのいいぞ!」と。
その直後に、私は彼を制止した。
鈴木君、
返却ボタン押すのは、やめなさい。
・・・
料理を待つ間、鈴木君と雑談。
この週末、(意外にも)投票に行って来たらしい。
私も投票済だったので、興味本位で鈴木君に聞いてみた。
どこに入れたの?
投票箱です。
面接時の無気力なやりとりがフラッシュバックした私は、それ以上の会話を控えることにした。
無事(ではないが)昼食を終え、職場に戻り、早速鈴木君に仕事を依頼。
鈴木君、これB3でコピーしてきてくれる?
随分かかるなぁと待っていたら、息を切らした鈴木君…
先輩、このビル地下2階までしかないっす!
・・・
別の日、鈴木君に「B」改め「A」サイズのコピーを頼んでみた。
この資料、会議で使うから、
明日までにA5で、20部用意しといてくれる?
すると翌朝、全て英訳された資料が私のデスクに置いてあった。
バカと天才は紙一重とは正に鈴木君のこと。か?
彼の伸びしろに不安と期待が入り混じる今日この頃。
人事部長が彼を採用した理由が、少しだけ分かったような気がする。
・・・
とは言ったものの…
入社式から1ヵ月後、鈴木君たちの歓迎会の開催が決まったので、告知したところ…
それ、残業代出ますか?
私は「歓迎会は無礼講な」と彼に言いかけてやめた。
新入社員の面白エピソードは、いかがでしたでしょうか。
おいまじか!
鈴木君て、うちの○○(あなたの部下)まんまやねんけど。
わかるわかる。
正に今、鈴木君に負けないくらいの天然社員に悩まされている最中よ。
といった先輩社員も多いかもしれませんね。
一方、最初から優秀な新入社員は、「誰かが育てる」というより「自ら育つ」というタイプが多いものです。
だからこそ、一見頼りなさそうな鈴木君のような新人こそが、しっかりと教育することで、将来のあなたの右腕に成り得る貴重な人財であるのかもしれません。
言うは易しですけどね(苦笑)
というわけで、10年後…
それでは、自己PRをお願いします。
不器用ながらも、自分を育ててくれた先輩社員や会社への恩を常に持ち続けた鈴木君。
過去の失敗や恥ずかしい話を一切包み隠すことなく笑いに変え、新入社員たちから揺るぎない信頼を集める彼が、今は当社の採用を任されています。
・・・
続く(かも)
omosiroi
hnさん
純粋に嬉しいです!
ありがとうございます。
鈴木部長の新卒の頃の様な40歳がいて頭が痛いですが、彼はある意味、初心を忘れないと言うことを再認識させてくれてます。
miさん
コメントありがとうございます!
40歳と言えば、いわゆる就職氷河期世代でしょうか。
年功序列&終身雇用が主流だった当時の価値観も大きく様変わりし、今や転職が当たり前の世の中になりました。
転職回数=新人回数とも言えますので、「彼」のような「永遠の新人?」が今日もどこかで絶賛活躍中!
なのかもしれませんねw