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【朝礼ネタ】求人広告の「男性スタッフ活躍中!」「30代活躍中!」 OK?NG?~
今回の朝礼ネタは「求人広告の疑問(その2)」。前記事では、身近な「求人広告(雇用)の疑問」として、
「週休2日制と完全週休2日制の違いは?」
「社会保険完備の完備とは?」
「試用期間中の解雇は予告不要?」
について取り上げました。
当記事では引き続き、求人広告においてお馴染みの表現、
「男性スタッフ活躍中!」「30代活躍中!」など
について、それぞれを規制する『男女雇用機会均等法』『雇用対策法』の簡単な解説を交え、法的に本当にOKなのか?実はNGなのか?を考察してみます。
「男性スタッフ募集」を「男性スタッフ活躍中!」と表記するのは本来NG
「男性が活躍している職場です!」という募集を見かけた女性が応募したところ「男性のみの募集なので」と断られたり、「20代のスタッフが活躍中!」を見て応募した40歳の方が年齢を理由に断られたりと…。
この場合、求人広告の表記までは実質OKですが、応募者への対応(回答)は完全NG、つまり違法となります。
確かに求職者としては、「男性スタッフ募集!」「20代の方募集!」と最初から求人広告に明記されていた方が誤解もなく分かりやすいかもしれません。
ところが、現状の「求職者」の多くは高齢化し、引く手あまたとはいかない。また、多くの女性が社会進出を望む昨今ながら、まだまだ女性の雇用機会が多いとは決して言えない日本。
こうした雇用情勢に合わせ制定され、改正を繰り返してきたのが、『男女雇用機会均等法』と『雇用対策法』です。
『男女雇用機会均等法』を30秒で理解する
男女雇用機会均等法は、昭和47年に当時「勤労婦人福祉法」として制定された法律。平成11年4月の改正時に、
募集・採用などにおいて、男女差をつけることが禁止されました。
一部、例外規定(
厚生労働省「男女均等な採用選考ルール」こちらの5~6ページに明記)もありますが、労働者の募集や採用において男女均等な雇用を推進するため、性別を理由とする差別を原則禁止する内容となっています。
また、同法では男女差別の他、間接差別(身長・体重、体力を要件とすることや、転居を伴う転勤を要件とすること)の禁止についても謳われています。
『雇用対策法』を30秒で理解する
雇用対策法は、昭和41年に制定された法律。平成19年10月の改正時に、
募集・採用について「年齢に関わりなく均等な機会を与えなければならない」という趣旨から年齢制限の禁止が義務化されました。
こちらも一部、例外規定(
厚生労働省「その募集・採用 年齢にこだわっていませんか?」こちらの4ページ以降に明記)がありますが、年齢にとらわれない人物本位、能力本位の募集・採用を推進することを趣旨とした改正となっています。
「男性スタッフ活躍中!」「30代活躍中!」は例外規定ではない
「男性スタッフ活躍中!」など性別に関する表現は『男女雇用機会均等法』
「30代活躍中!」などの年齢に関する表現は『雇用対策法』それぞれの法律に準拠するため、求人広告上でよく使われている表現です。が、問題の「男性スタッフ活躍中!」「30代活躍中!」等の表現は、前述の例外規定に明記されているわけではありません。
ではなぜ、多くの企業がこれに近しい表現を多用しているのでしょうか。
その答えが、こちらです。
まず、
『男女雇用機会均等法』上、「男性スタッフ活躍中!」が認められている理由。
※「女性が活躍しています」「男性が活躍中!」といった表現について
募集自体が女性のみ、男性のみとなっていないのであれば、“現状を説明しているに過ぎない”として、ただちに均等法違反とはなりませんが、女性のみ、男性のみを採用する方針のもと「女性(男性)活躍中」と表記しているのであれば、「その方針について違法」となります。
次に、
『雇用対策法』上、「30代活躍中!」が認められている理由。
Q: 広告内に「スタッフ全員が20代のフリーター」等という、その企業の現状を表すキャッチコピーやスタッフの写真等を表示したり、「20代が主役の会社」といった表現を記載したりすることは認められますか。
A: 「スタッフ全員が20代のフリーター」といった会社に関する事実を表示することは、直接には年齢制限に当たりません。ただし、「スタッフが20代でなければならない」「20代を他の年齢層に比べて優先して募集している」といった誤解を求職者に生じさせるおそれがないように努めていただく必要があります。
それぞれの、「
募集自体が女性のみ、男性のみとなっていないのであれば、“現状を説明しているに過ぎない”として、ただちに均等法違反とはなりません」、「
会社に関する事実を表示することは、直接には年齢制限に当たりません。」に則っているわけです。一応。
一応と付け加えた意味は、この記事をご覧頂いてるあなたなら、お分かり頂けるかと思います。
それぞれの「下線以降の但し書き」が守られていない企業が多いわけですね。
つまり、同じ「男性活躍中!」でも、
1.男性のみを採用したい ⇒ 男性活躍中!(男性募集と書けないため)2.男女ともに採用したい ⇒ 男性活躍中!(あくまで現状説明・紹介)1はNG、
2はOKであるという「考え方」は、お分かり頂けたと思います。
具体的に言えば、最初から男性のみを採用するつもりの採用担当者が
「女性から応募があったら、どうやって断ろうかな」と考えている時点でNGなわけです。
しかしながら、求人広告を見ただけでは、その表現が1なのか2なのかは当然判断がつきません。実際に問合せてみても、同法が広く浸透してきたこともあり、採用担当者が露骨に「男性(女性)のみ」「年齢制限」を口にするケースは確実に減ってきています。
こうした現状からも、「男性スタッフ活躍中!」「30代活躍中!」といった求人広告上の表現は、法律の趣旨と照らし合わせると、多くの場合、「認められている」というより「黙認されている」と言った方が現実に近いかもしれません。
あなたの会社ではいかがでしょうか?
・・・
以下、全くの余談です。
ただでさえ舌を噛みそうな長い名称の『男女雇用機会均等法』ですが、実はこれ、いわゆる通称・略称です。
正式名称は
『雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律』と言います。筆者は覚えられません。クイズマニアの方なら、どこかで回答チャンスがあるかもしれませんね。
なお、男女雇用機会均等法については、平成26年7月1日に新たな改正が予定されており、「間接差別」に関する対象範囲が拡大されます。
厚生労働省「平成26年7月1日施行 男女雇用機会均等法令の見直しについて(概要)」(参考)
・・・
会社内のスタッフが勤務中に求人広告を眺めているのも大問題ですが、会社自体の求人広告が堂々と法令違反しているのも大問題です。
前記事で取り上げた疑問と合わせ、間違った解釈は個人でとどめず、会社全体で共有したいものです。
あらゆる人にとって身近な「求人・雇用に関する疑問」。朝礼ネタ、職場での会話ネタとして取り上げてみると、思いのほか話題が広がるかもしれません。
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いまだにやっているところばかりだ
お名前未入力さん
コメントありがとうございます。
おっしゃる通りですね。
「男女均等に雇用」
「年齢制限なしの雇用」
従業員数千人規模の大企業から、数人の零細企業まで、一くくりに規制すること自体、現実的には無理があるのかもしれません。
とは言え法律は法律。
この先、どうなっていくんでしょうね?